特別な支援を必要とする子どもを持つ保護者たちが抱える、様々な悩みに応える
参加した保護者たちからは、実に様々な質問や相談が寄せられました。今回の事前アンケートで特に多かった悩みが、「特別支援学校へ通うか、もしくは特別支援学級へ通うかで悩んでいる」というもの。特別支援学校と特別支援学級のそれぞれのメリットについて、学校を選ぶ基準や選定のポイントも踏まえて、3人のパネリストが自身のアプローチや考え方について語ります。さらに話題は広がり、多くの保護者の方が悩みを抱えている放課後デイサービスについて。運営側だからこそ分かるその実態について、実際に我が子を通わせてみて感じたことなど、それぞれの立場からの視点で対話が繰り広げられます。さらに、放課後デイサービスの選び方や決め手、見学の時に必ずチェックするべきポイントについての具体的なアドバイスもありました。
質問:「療育手帳B1をもつ4歳の子供がいます。支援級がいいのか、支援学校がいいのか悩んでいます」「発達遅延があり、こだわりの強さなどから自閉症の気質があります。まだ成長段階ではありますが、今後どういった進路がいいのか思案中です」「愛の手帳2級を持つ子供の進路で悩んでいます。普通級か支援級で迷っており、どちらが子供によってよりよい環境なのかを知りたいです」
パネリスト 回答:合理的配慮などのプログラムの差があること。さらに支援級を選択した場合でも12年通うのか、中学、高校と他の場所へ行くのか。地域にもよるかと思うのですが、川崎市では保護者の意向というよりは教育委員会があなたのお子さんは支援学校、支援級、通常級なのかという割り振りをす「支援級も学校によってかなりプログラムが異なります。まずは、授業の内容、行事る傾向が強いと感じています。希望通りの学校選びができないとなった時に、一番必要なのは保護者の方のパワーです。教育委員との話し合いも課題だと感じています」
パネリスト島添さん 回答:「うちの娘は自閉症スペクトラム症候群を持っています。我が家は、小学校入学時に支援学校を選択しました。我が子が一般的な高校受験をできるかどうかと考えた時に、おそらく難しいだろうと思ったので、支援学校を選択しました。通常の学校であれば学校に合わせた本人の行動が必要ですが、それが我が子の成長を阻む、と考えました。特別支援学校では、一年生の時から就労に向けて学ぶので通常の小学校とはまるっきりカリキュラムが違います。支援学校というのは、すべての人たちが小学校一年生から就労に向けて活動を行なっていく場です。例えば、一人でお買い物ができるようになるように何度も練習をします。それが算数の授業の代わりになります。自立を目的にしてその子の特性を育てていく、それが支援学校の特徴です。お子様がまだ成長の途中段階であるなら、特別支援学級を選びつつ、支援学校を視野に入れるというのもありではないでしょうか」
パネリスト小林さん回答:「支援学級のメリットとデメリットをお話ししますね。支援級のメリットは、健常児と過ごせるということ。また、地域の学校であればお子様の成長に合わせて調整ができます。例えば1年生の間は通常級で過ごし、高学年になると支援級に移動するなども可能です。通常級と支援級の配分は、お子様の特性によって変わります。次はデメリットについて。まず、地域の学校であれば、校長が変わる度に方針も変わります。また、先生たちの手が足りないという声は聞きます。支援級と普通級を跨ぐということが、先生の手が足りないという理由で難しい場合もあるので、手厚いサポートが必要なお子様に関しては、支援学校も視野に入れてもいいのかもしれません」
質問:「放課後デイサービスは何を重視して選んだらよいでしょうか?」「放課後デイサービスが見つかりません。週5日通うとなると、とても1箇所では無理です。見つからない場合は、親が仕事を辞めるしか無いのでしょうか?」「放課後デイサービスの内容や違いなど、具体的にイメージを掴むために実情を知りたいです」
高橋さん回答:「私は息子の障害をきっかけに、社会保険労務士事務所を開業しました。障がい者を取り巻く社会的課題解決のために会社を設立し、紹介のある子供から大人の就労支援まで、切れ目のない支援を実施しています。事業のひとつとして、就労を目的とした場合の実践力を早い段階から養うため、中高生をターゲットにした放課後デイサービスを行なっています。放課後デイサービスを選ぶ際に、学校で手が届きにくいところ、学校ではやってもらえないことをやってもらえるところを選ぶとよいと思います。自立という選択肢を増やすための、実践力を養うようなカリキュラムが組まれているかどうかを見極める必要があります」
「SST、運動療育、音楽療育など、色々な療育を取り入れている放課後デイサービスがありますが、直接見にいくことが大切です。見学に行く際は、実際にお子さんが通う曜日を必ず見てください。既に枠が埋まっていることも多いので、児童発達から入った方が希望する放課後デイサービスに入れる確率は高くなります。また、障害児者一時預かりという、0歳から64歳まで通えるサービスもある。放課後デイサービスで賄えない場合もあるかと思いますので、そういう手段があることも知っておくとよいと思います」
パネリスト島添さん回答:「現在高校3年生のうちの娘は、就労支援を行なっているデイサービスに通っています。社会貢献になる行動をすることで、将来につながっていくと思います。娘は、この春から就労も決まりました。娘が中学校3年生になるまで地方に住んでいたのですが、当時通っていたデイサービスは、今思うとカリキュラムもやや幼稚で娘の年齢に合ってはいなかったと思います。東京に引っ越してきて思ったのは、行政によって福祉の手厚さ全く異なるということ。これだけ違うのかということを、身にしみて感じています。区を跨ぐだけで選択肢が広がる可能性があるので、いい放課後デイサービスが見つからないというのであれば、引っ越しも選択肢の一つとして視野に入れてもいいのではないでしょうか。あとは、デイサービスに通い始めたら任せっぱなしにするのではなく、どういうことを行なっているのか、抜き打ちで様子を見に行ってください。あとは、時間配分をチェックすること。迎えにいく時間、おやつの時間、全ての時間配分を必ず確認して、無理なくカリキュラムが組まれているかを確認すること。さらに、お子さんのその時々の成長に合わせて療育機関を探していくこと。相談員さんに密に相談して、常にお子さんに合うところを探し続けてください」
質問:「子供の将来の自立のために、日頃どのようなことを意識すべきか教えてください」
パネリスト高橋さん回答:「私の息子は21歳でA1手帳を持っています。3歳の時に、我が子の障害が分かりました。当時の私は総務人事系の仕事に携わっており、障害を持つ方の雇用にも関わっていたのですが、いざ自分の子供に障害があると分かった時にどうしたらいいのか分からなかったんです。その時に信頼している方から掛けられた言葉で救われました。『目の前の働いている人を見てごらん。今できること、今やれることをやってもらうこと。そしてたくさん褒めてあげること。それが自立に向けた一番の大事なことだよ』と。就労に関しては今が過渡期で、今年度から企業の在り方も大きく変わっていきます。企業が変わることで、雇用が変わり、そして教育が変わっていきます。なので、今後はその推移を見守ってください」
パネリスト島添さん回答:「まずは生活自立を目指しました。いずれ一人で利用できるようにと、公共交通機関や公共の施設を意識して使うようにしました。あとは、料理や掃除などの家のお手伝いをどんどんさせました。できないという風に決めつけることは辞めてください。いろいろなお話を聞いていると、できるのにさせていない、ということも多いと感じます。あとはご近所の方など周囲への告知を行うこと。小さい頃、娘が裸で脱走することがあったので、同じマンションの方達には事情をお伝えして、理解とご協力をお願いしていました」